“近くで建前をやるので見学にこない?”、といつもお世話になっている建築会社の親方からお誘いがありました。
「建前」(たてまえ)とは上棟(じょうとう)などとも呼ばれているようですが、新しく建てる家の土台の上に柱や梁を組み上げてゆき、棟木(むなぎ)を取り付ける作業です。
あわせて建物や工事の安全を願う式典「上棟式」があります。昔は、神主さんを招いたり餅をまいたりしていたようですが、最近は、棟梁、大工、施主のみできわめて簡素に行っているようです。
さて、私が現場に到着したころには、すでにある程度の骨組みが出来上がっていました。
重機と手作業にて、プレカットされた柱と梁を大工さんがどんどん組み上げて、家の形が少しづつ見えてきます。
いまは5月も後半ですが、まだ山には雪が残っています。作業をするには、いい季節です。
大工さんたちは、それぞれに手際よく作業をしています。
ところで、こちらの建築会社の大工さんは、とても若い方ばかりです。
ちまたでは、少子高齢化で建築業界も人手不足、後継者不足という話は聞きますが、そんな話とはまるで無縁なようです。
なぜなら、若い大工さんがわざわざこの会社で働きたくなるような秘密があるからです…。
その秘密とはこちら ↓
「古材」です。
この古材はおそらく松で、北信州の古民家を解体した際に再利用できるように大事に解体・保管されていたものです。
もちろん100年以上前の古材です。
新築なのに古材を使って耐久性は大丈夫なの?と思われるかもしれませんが、実は、木は切り倒されたときから強くなるそうです!
”一般に、鉄やコンクリートなどの材料は、新しい時が一番強く古くなるにつれて弱くなるが、逆に木材は、時間とともにどんどん強度を増していく。樹齢100年の檜の場合、伐採されてから100年後に最も引っ張り強度・圧縮強度が増しているとの研究報告がある。木材の強度は200~300年は変わらず、強度が落ちるのは800~1200年後も未来の話だという。だから古民家は耐久年数の長い住宅となる。”
2015年 出版文化社 一般社団法人住まい教育推進協会発行 川上幸生「古民家解體新書Ⅱ」95-96Pより引用
そして、こちらの建築会社では、木材の手刻み加工にこだわりをもっています。
現在の木造住宅は、機械でまっすぐにカットされた木材を金具で留めて組み立てていくのがほとんどとなっており、 昔ながらの大工技術が引き継がれることがありません。
新築だとしても、たとえ柱一本だけでも手刻み加工した古材を利用することによって、若い大工さんが経験を積むことができ、次の世代へ大工技術を受け継いでいくことが大事である、と熱く語る社長さんの強い思いがあります。
なお、このお宅で再利用された古材は、栓を打つ木組みでクギやボルトは使用していないそうです。
古民家のリフォームや再生移築はもちろんですが、貴重な古材をほんの一部でもこだわりを持って活用することにより、日本が誇る大工技術を伝えていくことが可能なのですね。
このような強い思い、こだわりと技術があるため、志の高い若い大工さんたちが自然と集まってくるのです。
さて、こちらの建物は、店舗併用住宅になるそうで、店舗はカフェになるそうです。
カフェ部分に、見せる柱・梁として古材を使います。
施主さんにお話を伺いましたが、地元の方が気軽に来れるような、朝早くから開いている食事もできるカフェにされるそうです。
大都市のように朝早くからおいしいコーヒーと朝食がとれて、通年営業している便利なお店がこのあたりの地域にはほとんどないので、待っていました!という感じです。
ここ北信州はスキー場が多いので、冬だけ営業しているカフェ、レストランやバーなどは結構あるんですが、やはり地元民には一年中利用できるお店が一番です!
あぁ、どんなカフェになるのか今から楽しみです。
地元のお客として、このようなお店をサポートして、地域を盛り上げていきたいと思います。
わたしたち「隣の家」は、このような古材の販売や古材活用が得意な建築会社のご紹介など可能ですので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡ください。
このように、古材を活用した店舗や住宅が少しづつ増えていくといいですね。